ご遺体メイクで求められる性能とは
メイクアップは肌を綺麗にする技術。
特殊メイクは肌を再現する技術。
ご遺体メイクを行う上で、この違いを理解することは非常に重要です。
一般的な美容メイクでは、肌を美しく見せることが目的になります。
一方、ご遺体メイクでは「その方らしさを再現すること」が目的になります。
そのため、ご遺体メイクには美容メイクだけではなく、特殊メイクの考え方や材料に関する知識も必要になります。
生体とご遺体では肌の状態が異なる
私たちが普段メイクを行う相手は生体です。
生体の皮膚は、
- 血液が循環している
- 皮脂が分泌されている
- 発汗機能がある
- 肌の弾力が保たれている
という状態です。
しかし、ご遺体では状況が異なります。
- 脱水が進行している
- 血色が失われている
- 黄疸やチアノーゼなどの変色が起こる
- 表皮が弱くなっている
- スキンスリップが発生することがある
このような状態では、生体用のメイク技術だけでは対応が難しいケースも少なくありません。
ご遺体メイクで重要なのは「隠すこと」ではありません
ご遺体メイクというと、
「変色を隠す」
「顔色を良くする」
というイメージを持たれる方も多いかもしれません。
しかし、本当に重要なのは単純に隠すことではありません。
大切なのは、
ご本人らしい肌色や質感を再現すること
です。
厚塗りをすれば変色は隠れます。
しかし、不自然な仕上がりになってしまうことがあります。
そのため、ご遺体メイクではできるだけ薄い塗布膜で自然な補色を行うことが重要になります。
補色力が求められる理由
ご遺体メイクでは、
- 黄疸
- チアノーゼ
- 内出血
- 死後変色
などに対応する必要があります。
そのため、単に肌色のファンデーションを重ねるだけでは十分ではありません。
色彩理論に基づいた補色技術と、それを実現できる発色性能が求められます。
少ない塗布量で補色できることは、自然な仕上がりにもつながります。
定着力が求められる理由
ご遺体の皮膚状態は一人ひとり異なります。
乾燥が強い場合もあれば、水分が表面に出てくる場合もあります。
また、
- スキンスリップ
- 表皮剥離
- 浮腫
- 組織の軟化
などが発生していることもあります。
そのため、ご遺体メイクでは「吹けること」よりも「定着すること」が重要になります。
どれだけ綺麗に吹けても、定着しなければ意味がありません。
ご遺体メイクには材料の知識も必要
エアブラシインクやファンデーションには様々な種類があります。
アルコールベース
ウォーターベース
シリコーンベース
それぞれ得意な用途が異なります。
ご遺体の状態によっては、
- 補色を優先するのか
- 肌質感を優先するのか
- 定着を優先するのか
を判断しなければなりません。
つまり、ご遺体メイクでは技術だけでなく材料を選択する知識も必要になります。
エアブラシは機械ではなく技術です
近年、エアブラシメイクは広く普及してきました。
しかし、エアブラシは機械を使うことが目的ではありません。
重要なのは、
- 色を理解すること
- 肌を理解すること
- 材料を理解すること
です。
エアブラシはそれらを表現するための道具に過ぎません。
次回予告
次回は、現在でも多くの誤解が見られる
「シリコン・シリカ・シリコーンの違い」
について解説します。
化粧品業界でも混同されることが多いテーマですが、正しく理解することで材料選択の考え方も大きく変わります。
