第2回 – 展示会に出展して改めて感じた「エアブラシインクはどれも同じではない」

エアブラシインクの4種類を知っていますか?

前回の記事では、「エアブラシインクはどれも同じではない」というお話をしました。

実際に展示会や講習会では、

「インクの違いがよく分からない」

「エアブラシ用ならどれも同じだと思っていた」

という声をよく耳にします。

しかし、エアブラシメイクアップ用のインクやファンデーションは、ベースとなる成分によって大きく4種類に分類されます。

同じ肌色に見えるインクでも、ベースが違えば定着力や耐久性、発色、仕上がりは大きく異なります。

今回は、それぞれの特徴について簡単にご紹介します。


1. アルコールベース

代表例:Dura

アルコールベースは、特殊メイクやボディアートの分野で広く使用されているインクです。

TEMPTU JAPAN 公式ECサイト⇓

https://www.temptu.co.jp/esp/shop?cid=241

特徴

  • 耐久性が高い
  • 汗や水に強い
  • タトゥカバーに適している
  • シリコーンやラテックスなどの特殊素材にも使用できる

特殊メイクやエピテーゼ(人工補綴物)の着色にも使用されるほど定着性に優れています。

また、ご遺体メイクにおいても、変色部の補色やカバーを行う際に優れた性能を発揮します。皮膚状態が安定していないケースや、通常のファンデーションでは発色しにくいケースでも使用できるため、補修・補色技術では重要な選択肢の一つとなっています。

一方で、アルコール成分を含むため、生体への使用部位や肌状態によっては乾燥を感じることがあります。


2. ウォーターベース(レジンベース)

代表例:AQUA

名前に「ウォーター」と付いていますが、単純な水性インクとは異なります。

水溶性レジン(樹脂)を使用しており、乾燥後に被膜を形成するタイプです。

https://www.temptu.co.jp/esp/shop?cid=242

特徴

  • マットな仕上がり
  • 舞台メイク用途で使用されることが多い
  • ウォータープルーフ性を持つ製品もある

乾燥後は樹脂による被膜を形成するため、水や汗に対する耐性を持っています。

一方で、ご遺体メイクの現場では注意が必要な場合があります。

当社がこれまで行ってきたご遺体メイクや技術検証では、補色やカバーを強く求めて塗布量が増えた場合、被膜の硬さが目立つことがありました。

また、ご遺体の状態によっては皮膚表面から水分が出てくるケースがあります。そのような場合、インクの下に水分が留まりやすくなり、時間の経過とともに密着性が低下するケースも確認されています。

特に、

  • スキンスリップが発生しているケース
  • 高度な変色補整が必要なケース
  • 長時間の安置が想定されるケース

では、事前の検証や適切な製品選択が重要になります。

インクの性能に優劣があるというよりも、それぞれ得意とする用途が異なるため、目的に応じた使い分けが必要です。


3. ウォーターベース(水性)

代表例:AQ

もっともシンプルな水性タイプです。

特徴

  • 発色が良い
  • 落としやすい
  • 洗浄が簡単
  • 練習用にも適している

フェイスペイントやイベント用途など、一時的なメイクに向いています。

反面、水や汗には弱く、長時間の耐久性は高くありません。


4. シリコーンベース

代表例:S/B、PC

近年、映像・美容業界で使用が増えているタイプです。

S/B メークアップ⇓

https://www.temptu.co.jp/esp/shop?cid=239

PERFECT CANVAS (PC)は、「S/B」の改良版⇓

https://www.temptu.co.jp/esp/shop?cid=240

特徴

  • 肌なじみが良い
  • 自然な質感
  • 耐久性が高い
  • 発色が安定している
  • 水や汗に強い

シリコーンオイルを利用することで、薄く均一な塗布が可能になります。

そのため、映像、ブライダル、補整メイクなど幅広い分野で使用されています。

ご遺体メイクにおいても、自然な肌質感を再現しやすく、黄疸や変色が比較的軽度なケースではシリコーンベースのみで仕上げることも可能です。

一方で、強い黄疸や高度な変色補整が必要な場合には、アルコールベースで補色を行った後にシリコーンベースで肌質感を整える方法が有効な場合があります。

この方法により、補色性能と自然な仕上がりを両立することができます。

近年ではシリコーンベースのみで仕上げるケースも増えていますが、非常に均一で美しい肌表現が可能な反面、ご遺体本来の年齢感や肌質感まで滑らかに見せてしまうことがあります。

そのため、技術者によっては「あえて少し肌の質感を残す」「年齢に応じた仕上がりを意識する」といった調整を行う場合もあります。

重要なのは、単に綺麗に仕上げることではなく、その方らしい自然な表情や印象を再現することです。


「どれが一番良い」ではなく「何に使うか」

講習会などでよく聞かれるのが、

「結局どれが一番良いのですか?」

という質問です。

しかし、この質問には正解がありません。

なぜなら、

  • 特殊メイク
  • 映像メイク
  • ブライダル
  • フェイスペイント
  • ご遺体メイク

では求められる性能が異なるからです。

重要なのは、

「どのインクを使っているか」

ではなく、

「なぜそのインクを選んでいるのか」

を理解することです。


まずは種類を知ることが重要

エアブラシメイクアップの技術を学ぶ際、多くの場合は機械の使い方や吹き方から学びます。

しかし、本当に重要なのはインクそのものを理解することです。

同じ技術者が使用しても、インクが変われば結果は大きく変わります。

まずはエアブラシインクには複数の種類があることを知り、それぞれの特徴を理解することから始めてみてください。


次回予告

次回は、ご遺体メイクにおいてなぜインク選びが重要なのかを解説します。

生体メイクとの違いや、変色補整・スキンスリップへの対応など、ご遺体メイク特有の視点からお話ししていきます。