技術コラム:エアブラシメイク材料学 – 展示会に出展して改めて感じた「エアブラシインクはどれも同じではない」

シリコン・シリカ・シリコーンの違いを説明できますか?

展示会や講習会などでお話をしていると、

「シリコンが入っているから肌に悪い」

「ノンシリコンだから安全」

「シリコンは毛穴を塞ぐ」

といった説明を未だに耳にすることがあります。15年以上前から同じ説明が繰り返されていますが、残念ながら現在でも正しく理解されているとは言い難い状況です。

しかし、その説明をされている方に

「シリコンとは何ですか?」

と質問すると、明確に説明できる方は決して多くありません。

実は一般的に「シリコン」とひとくくりにされているものの中には、まったく異なる物質が含まれています。

材料を正しく理解するためには、まずそれぞれの違いを知ることが重要です。


シリコン(Silicon)とは何か

シリコン(Silicon)とは元素の名称です。

元素記号はSi。

原子番号14の元素で、日本語では「ケイ素」と呼ばれます。

半導体や太陽電池などに使用されることで有名ですが、そのまま化粧品に配合されるものではありません。

つまり、

シリコン(Silicon)=ケイ素という元素

です。

化粧品成分として語られる「シリコン」とは、本来別の話になります。


シリカ(Silica)とは何か

シリカ(Silica)は二酸化ケイ素(SiO₂)です。

ガラスや鉱物の主成分として知られています。

化粧品では、

  • 粉体の流動性向上
  • 皮脂吸着
  • さらさら感の付与
  • 製品の安定化

などを目的として使用されます。

ファンデーションやアイシャドウなど、多くの化粧品に配合されています。

なお、「シリカ」と聞いてアスベストを連想される方もいますが、化粧品に使用される非結晶性シリカとアスベストは別の物質です。


シリコーン(Silicone)とは何か

シリコーン(Silicone)は、シロキサン結合を骨格とする高分子化合物の総称です。

化粧品で「シリコン入り」と呼ばれるものの多くは、実際にはこのシリコーン成分を指しています。

代表的なものには、

  • ジメチコン
  • シクロペンタシロキサン
  • シクロヘキサシロキサン

などがあります。

シリコーンは、

  • 塗布性の向上
  • 肌触りの改善
  • 撥水性の付与
  • 均一な仕上がり

などを目的として配合されています。

現在では化粧品だけでなく、医療分野でも広く利用されています。


シリコーンオイルは本当に危険なのか

現在でも、

「シリコンは毛穴を塞ぐ」

「シリコンは肌に悪い」

「ノンシリコンだから安全」

という説明を耳にすることがあります。

しかし、このような説明はシリコーンの種類を区別せずに語られていることが少なくありません。

実際に化粧品で広く使用されているシリコーンの中には、揮発性シリコーン(Volatile Silicone)と呼ばれる種類があります。

代表的な成分であるシクロペンタシロキサン(D5)は、ファンデーションや化粧下地などにも広く配合されています。

この成分は肌へ均一に広がり、なめらかな塗布性を与えた後、その多くが揮発することが知られています。

一方で、すべてのシリコーンが揮発するわけではありません。

例えば、

  • シクロペンタシロキサン(D5)などの低分子環状シリコーンは揮発性を持つ
  • ジメチコンなどの高分子シリコーンは揮発せず、肌表面で異なる役割を担う

という違いがあります。

つまり、

「シリコーンだから危険」

あるいは

「ノンシリコンだから安全」

という単純な話ではありません。

重要なのは、その成分がどのような目的で配合されているかです。


ご遺体メイクでも重要なのは性能です

ご遺体メイクの現場では、

  • 補色性能
  • 定着性能
  • 耐久性
  • 肌質感の再現

などが求められます。

そのため、

「シリコーンが入っているか」

ではなく、

「目的に合った性能を持っているか」

が重要になります。

実際の現場では、

アルコールベースが適しているケースもあれば、

シリコーンベースが適しているケースもあります。

また、両者を組み合わせることで、より自然な仕上がりになる場合もあります。

材料の名前だけで良し悪しを判断するのではなく、その特性を理解して使い分けることが重要です。


私たちが伝えたいこと

私が1999年から講習でお伝えしているのは、特定メーカーの製品を勧めることではありません。

「なぜこの材料を選ぶのか」を理解できる技術者になっていただくことです。

材料の名前だけで良し悪しを判断するのではなく、

  • 成分を理解する
  • 特性を理解する
  • 目的を理解する

そして、その場に最適な材料を選択する。

それがエアブラシメイクアップであり、メイクであり、特殊メイクであり、ご遺体メイクであり、フェイスペインティングでもあると考えています。

単に色を塗る仕事をしているのではありません。

アーティストであり、表現者であり、技術者でもあります。

だからこそ、技術だけでなく材料への理解も必要です。

材料に対する正しい知識は、表現の幅を広げ、より良い仕上がりへとつながります。

材料に対する正しい知識は、技術の一部なのです。