シリコーンゴムへの着色について問い合わせも頂きます。
様々な手法がありますが、考え方は全て同じです。
シリコーンゴムには、付加硬化型シリコーン【プラチナ(白金)硬化】と縮合硬化型シリコーン【錫硬化】があります。・・・シリコーンゴム詳細は、こちらの記事を参照
シリコーンゴム【プラチナ硬化】の補綴物(アプライエンス)や小道具に着色、シリコーンコーキング【スズ硬化】にインク(塗料)を付着させる方法のどちらかを知りたいだけかもしれませんが、方法はほぼ同じであるため、まとめて記載します。
シリコーンゴムにインク(塗料)は定着しないため付着を促進するには、一定の準備や手法が必要。シリコーンゴムにペインティング(着色)する必要がある場合は、いくつか手法を学んでおく必要があります。
1, シリコーンゴムに付着している離型剤を完全に除去します。
【IPA】、【アセトン】等の溶剤でシリコーンゴムの表面をふき取れば下準備は完成。
※注意:【スーパーボールディーズ】や【ボールディーズ】を使用した補綴物には上記溶剤は使用できません。
スーパーボールディーズは、IPA とアセトン| ボールディーズは、アセトンでの表面ふき取りはできません。
スーパーボールディーズやボールディーズを使用した場合は中性洗剤で洗い流します。
2, 次に着色を行いますが、シリコーンゴムの特性を頭に入れておきます。
シリコーンゴムは柔軟性があるため、インクも柔軟性を持たせることが重要です。柔軟性がないと、インクがはがれやすくなります。柔軟性がないインクは、クラック【ひび割れ】も起こし見た目も良くありません。柔軟性があるインクを使うか、柔軟なインクを作ります。
シリコーン【プラチナ硬化】での着色
プラチナ硬化シリコーンゴムには、プラチナ硬化シリコーンで、着色するのが一番のお勧めです。
インクの柔軟性もあって安定して定着をするため。
注意:プラチナ硬化シリコーンゴムの中にはゴム化した後にシリコーンを流しても結合しにくい(しない)タイプもあり、この場合この着色方法は使用できません。【トランジル2O】、【トランジル4O-1】はその代表的なシリコーンです。この二つのシリコーンは着色には使用できますが、着色される側(シリコーンゴム)の場合には定着しにくくなります。
1, 着色に使用するシリコーン。
ここで準備するシリコーンは、粘性の低く、硬化が早めのシリコーンを用意します。
※粘性のあるシリコーン【GEL-1O等】にシリコーンオイルを添加して粘性を下げることもできますが、シリコーンと架橋結合しないため、シリコーンゴム内から浸出するため、使用量をできるだけ少なくしたいため粘性の低いシリコーンを準備して下さい。・・・【シリコーンオイル】の架橋結合については、こちらの記事【ショア硬度の変化はシリコーンオイルはお勧めできないについて】を参照
2, シリコーンゴムを柔らかくする添加剤
着色に使用するシリコーンが、ショア硬度が硬い場合や仕上がりをより柔らかくしたい場合に使用(必要な場合)。
・・・【ショア硬度】ついては、こちらの記事【ショア硬度について】を参照
3, 着色剤
着色剤には、【シリコーンピグメント】がお勧め少量でもシリコーンへしっかりと色が混ざります。
4, 薄め液
色を薄めることで透明感のある着色剤を作り出します。この薄めた着色剤は、透明感のあるリアルな皮膚感や現実世界へキャラクターを呼び出すのに必要不可欠な工程です。
使用(作成)するお勧めのインク道具【プラチナ硬化着色 #1】
1, GEL-25
2, デッドナーLV
3, シリコーンピグメント
4, シリコーンオイル(代用:スーパーソルブ)
それぞれの利点など
1, GEL-25
GEL-25は、シリコーンの中でも粘性が低い種類で、(サラサラとしている)シリコーンゴム化しても接着力が良いためお勧めです。硬化も早いため作業効率も良くなります。
GEL-OOやGEL-1Oでも着色剤として使用できますが、粘性がGEL-25より高いため、粘性を下げるためにシリコーンオイルやスーパーソルブの量が増やす必要があります。シリコーンオイル(やスーパーソルブ)については、下記を参照してください。
2, デッドナーLV
デッドナーとは、硬化後のシリコーンゴムのショア硬度を減少(柔らかく)させるための添加剤。
GEL-25はショア硬度がショアA 25度品のため、着色をしたい土台のシリコーンゴム(ショアA OOなど)がそれよりも柔らかい場合、GEL-25もデッドナーを添加して柔らかくする必要があります。GEL-25のままでは硬すぎるため。
当社取り扱いは、【デッドナー】と【デッドナーLV】があり、デッドナーLVの方が粘性が低いため着色剤としては向いています。GEL-OOやGEL-1OにデッドナーLVを添加して粘性を下げることもできますが、デッドナーLVの使用目的はショア硬度減少です。そのため、粘性減少が本来の目的ではありません。・・・【デッドナー】ついては、こちらの記事【デッドナーとデッドナーLVについて】を参照
3, シリコーンピグメント
シリコーンピグメント以外でも塗料として使用できますが、発色やコスト、硬化阻害という問題をシリコーンピグメントであれば気にする必要はありません。
4, シリコーンオイル
シリコーンオイルを添加することでインクの濃度を調整でき、透明感のあるインクを作り出させます。なお、スーパーソルブでも代用ができますが、それぞれに欠点もあります。
欠点:シリコーンオイル
・架橋結合しないためシリコーンゴム化してから油が滲出する。
欠点:スーパーソルブ
・硬化時間が遅くなる。
・硬化してスーパーソルブ揮発後に色が縮む。
結論:シリコーンオイル|スーパーソルブ
粘性の低いシリコーンを使用することで、シリコーンオイルやスーパーソルブの量を減らせる。
シリコーンオイルは、減らすことでオイルの浸出を少なくできる。
スーパーソルブは、減らすことで、色の縮みを最小限にできる。
・・・【シリコーンオイル】の架橋結合については、こちらの記事【シリコーンゴムの柔軟性をシリコーンオイルで代用はできないについて】を参照
シリコーンコーキングでの着色【スズ硬化への着色】
油性インクに柔軟性を持たせるために、シリコーンコーキングに混ぜてペイント材(塗料)を作ります。
このままでは色が濃いため、透明感のある皮膚や小道具には不向きです。透明感を出すために薄める必要があります。
薄め液として、ホワイトスピリット(ミネラルスピリット)を使います。シリコーンゴムに透明感のある色で着色することができます。混合したホワイトスピリットは蒸発し、色だけが残ります。
エアブラシ機器で飛ばすことができるぐらい薄めることもできます。
※この方法を試す場合、必ず防塵防毒マスクを使用して下さい。
※エアブラシガンもすぐに洗浄をします。硬化後掃除をすることはできないため。
使用(作成)するインク道具【コーキングペイント】
・シリコーンコーキング
・油性インク(塗料)
・ホワイトスピリット
この方法は【スズ硬化】シリコーンゴムへ着色する場合は、とても安定して定着します(コーキングもスズ硬化ベースのため)。しかし、【プラチナ硬化】シリコーンゴムへ着色する場合は、コーキングが定着しにくく剥がれ落ちることもあります。
その場合いくつか方法がありますが、代表的な物を1つ。Dリモネン(オレンジオイル)と、非常に強力な接着コーキング剤であるWacker Elastosil A07(日本では旭化成が代理店)を混ぜたものを【プラチナ硬化】シリコーンゴムに塗ります。乾燥すると、プラチナ硬化シリコーンゴムに定着して、上記のコーキングペイントの付着がよくなり、乾けば崩れにくくなりあます。
利点
・スズ硬化シリコーンゴムとの相性が良い
・低価格
欠点
・プラチナ硬化シリコーンゴムに着色の場合、定着が悪いため下処理が必要
・安全性
ホワイトスピリット使用時は注意が必要
ボールディーズでの着色
【ボールディーズ】(被膜形成剤)を【アセトン】で希釈し、そこにアセトンでも溶ける塗料で色付をします。
シリコーンゴムへの着色はペイントブラシやスポンジで塗ることもできます。しかし、アセトンが揮発してボールディーズだけになったペイントブラシやスポンジは固まります。その場合元に戻すことはできません(使い捨てになります)。
この着色方法はエアブラシで吹きつけての着色がお勧めです。
※必ず防塵防毒マスクを使用して下さい。
利点
・全てのタイプのシリコーンゴムとの相性が良い
欠点
・安全性
・エアブラシ機器を準備
・強い摩擦に弱い
・アセトンで溶けだす
スーパーボールディーズでの着色
【スーパーボールディーズ】(被膜形成剤)を【IPA】で希釈し、そこにアルコールで溶けるインク(DURA)で色付をします。
シリコーンゴムへの着色はペイントブラシやスポンジで塗ることもできます。しかし、IPAが揮発してスーパーボールディーズだけになったペイントブラシやスポンジは固まります。その場合元に戻すことはできません(使い捨てになります)。
この着色方法はエアブラシで吹きつけての着色がお勧めです。
※この方法は、必ず防塵防毒マスクを使用して下さい。
利点
・全てのタイプのシリコーンゴムとの相性が良い
欠点
・エアブラシ機器を準備
・強い摩擦に弱い
・IPAやアセトンで溶けだす
アルコールベース パレットでの着色
特殊メーク業界やメーク業界では、最も知られている優れたインクの1つ。アルコールで溶かして使用するパレットで、世界中の特殊メークアーティストや、ヘアメークアーティストが愛用しています。【Dura パレット】、【スキンイラストレーター】が日本では人気があります。
アルコールベースのインクは柔軟性があり、役者の激しい動きでも落ちることがありません。アルコールで溶かして使用することで透明感も得られ皮膚感も容易に演出できます。もちろん柔軟性も担保されます。
柔軟性もあるためシリコーンゴムにも着色できます。アルコールペイントは、補綴物(アプライエンス)などの着色には向いていますが、小道具などには不向きです。理由は、強い摩擦と(長)期間による色落ちです。
小道具等にアルコールペイントで着色後にコーティングをしない場合、何度も繰り返し手で触れていると摩擦で色落ちが見られます。また、シリコーンで造形物(展示物)を製作した場合、シリコーンゴムに含まれる物質【シリコーンオイル】が、ブリードすることでペイントされている色が薄くなったり、より摩擦で落ちやすくなったりするため。
※コーティング剤はいくつかあります。下記、【アルコールインクでの着色】を参照。
・・・【シリコーンオイル】のブリードについては、こちらの記事【シリコーンゴムの柔軟性をシリコーンオイルで代用はできないについて】を参照してください。
アルコール インクでの着色
エアブラシ機器で使用するために液体状になっているインクです。日本では【DURA】(デュラ)が最も人気があります。特徴は、上記【アルコールベースパレットでの着色】内に記載。
エアブラシで吹きつけることで、弾きやすい素材にも付着させることが容易にでき、シリコーンゴムへの着色にはエアブラシがお勧め。
エアブラシ着色後にコーティングをすることで、ペイントの崩れを防止できます。もちろん上記アルコールパレットを使用した場合も同様にペイントの崩れを防止します。
シリコーンゴムの柔軟性に合わせるように、インクも柔軟性を持たせることが重要と説明しました。同様にコーティング剤にも柔軟性が求められます。
ここでは特殊メークやステージメーク、特殊造形で使用されるコーティング剤を取り上げます。
グリーンマーブルシーラー
特殊メーク用のシーラーです。
特殊メーク用、ステージメーク用で1番コーティング力が高いコーティング剤。
匂いが強いため匂いに敏感な方は気を付けて下さい。
ブルーマーブルシーラー
特殊メーク用のシーラーです。
仕上がりは艶を抑えてマット(非光沢)になります。
グリーンマーブルよりもコーティング力は弱くなります。
ゼロマーブルシーラー
特殊メーク用のシーラーです。
仕上がりはブルーマーブルよりも艶を抑えてマット(非光沢)になります。
グリーンマーブルよりもコーティング力は弱くなりますが、ブルーマーブルよりもコーティング力は強くなります。
バリアスプレイ
ステージメーク用のシーラーです。
ペイント(塗料)が落ちやすいものを使用している場合にオススメです。
例えば、ステージメーク用の【クリームペイント】は摩擦に弱いですが、バリアスプレイを使用することで摩擦に強くなります。その他には、フェイスペイントで使用される【AQ】(水性)は水分に弱く大量の汗で溶けだしますが、コーティングすることで水分にも強くなります。シリコーンゴムへも使用できますが、使用するペイント(塗料)が摩擦に弱く、水分に弱い場合はお勧めです。
ボールディーズ
特殊メーク、特殊造形用の被膜形成剤です。(シーラーとしても代用可)
着色後に表面上にエアブラシで吹きつけてコーティングします。こちらはアセトンで希釈するタイプ。
スーパーボールディーズ
特殊メーク、特殊造形用の被膜形成剤です。(シーラーとしても代用可)
着色後に表面上にエアブラシで吹きつけてコーティングします。こちらはIPAで希釈するタイプ。
・・・【ボールディーズ】【スーパーボールディーズ】ついては、こちらの記事【被膜形成剤の重要性。ボールディーズとスーパーボールディーズって?】を参照してください。
上記の説明はシリコーンゴム(硬化後)の着色について、いくつかの方法を説明をしました。
シリコーン【AとB】を混ぜ合せる前に必ず、それぞれに内部着色で大凡の色を作成しておきます。
シリコーンへの内部着色は、【シリコーンピグメント】【フロッキング】を使用します。